筆記用具 -1-

人生の備忘録

仕事に於いても日常の生活でも筆記用具は良く使う。

思い返してみれば半世紀以上も前から僕の筆記用具人生が始まった。

多分、幼少の頃に初めて手にしたのはクレヨンだろう。

ただ、クレヨンは基本絵を描く用具だから筆記用具からは除外しよう。

 

そうしてみると初めて手にした筆記用具は鉛筆・・・。

初めて手にした時に祖父からナイフでの芯の削り方を学んだような記憶がある。

祖父の削った鉛筆に比べて芯だけがやたら長く出ていたり、

削った箇所が左右上下歪な形になっていたり・・・。

ナイフで上手く鉛筆を削ることは出来なかった。

 

それからしばらくして、

手のひらに乗せて手動で削る鉛筆削り器、

ハンドルを回すタイプの削り器、

電動削り器・・・などが次々と出現してきて

それらを全て、使う体験をしてきた。

 

中学に入学する頃には、鉛筆はシャーペンに変わっていき、

ボールペンも使い始めていたように記憶している。

その後、万年筆にも出会っていく。

初めて万年筆を手にしたのは、母がプレゼントしてくれた。

それは、僕が5歳の時に亡くなった父の形見だった。

インク瓶から万年筆のスポイトでインクを吸い取るタイプ。

この万年筆で社会において活動していた父の後ろ姿を空想しながら、

初めて書いた字は「若山祥夫」だった。

それは同じく父の形見である手帳に父の名「若山祥三」が記されていたからだった。

「お父さんは達筆だったのよ。」という母の言葉の通り、

手帳に記された父の名は文句の付けようも無い達筆だった。

それに対して僕が書く自分の名は、文句無く悪筆・・・。

 

その後も成人するまで、成人してからもなんとか父に近づこうとしているが、

全く近づける気配は無い。

僕がもしも父の達筆を超えてしまっていたら、

母の決まり文句「お父さんは達筆だったのよ。」が言えなくなって

母に父の思い出を描きにくくなってしまっていただろう・・・から、

これで良いのだ!と自分に言い聞かせている。