筆記用具 -2-

人生の備忘録

中学生までに使ってきた筆記用具は、

鉛筆、シャープペンシル、ボールペン、父の形見の万年筆・・・と

遍歴を重ねてきた。

父の万年筆は古くてインクを吸い取るスポイトのゴムが劣化しつつあった。

それでもそのスポイトを上手く摘まんでインクを吸い取って

父の机に向かう姿を想像しながら文字を書いていた。

 

そんな時、学習雑誌の懸賞に当選して万年筆が貰えた。

高校に進学した頃か・・・。

その万年筆はインクがカートリッジ式。

手にした時の喜びは今でも覚えている。

万年筆の本体を回して本体とペン先部分を離してから

カートリッジを装填するがなかなかペン先からインクが出てこない。

しばらく考えてカートリッジの装着の仕方が悪かったことに気付く。

予備のカートリッジを眺めていて気付いたのだった。

カートリッジの先端にインク止めの金属状のボールがあるのを見て、

カートリッジの仕組みが分かった。

ちょっと強く押し込まないとカートリッジの先端にある

ボール状のインク止めが外れないのだ。

強く押し込んでからしばらく待っているとペン先からインクが出るようになって、

文字が書けるようになった。

そこでも書いた文字は「若山祥夫」・・・自分の名前だった。

 

その万年筆はペン先が硬くて、書いた名前の文字は細くて力弱いものだった。

以来、万年筆をほとんど使わない生活を送っていたが、

大学入学時や社会人になった時などに、プレゼントで

万年筆を貰って、年賀状の宛名書きや添え書きをする時に使ってきた。

ただ、頂いた身としては言い辛いが、

どれも僕の手には馴染まず書いた文字に満足できなかった。

 

時は流れて40歳になる前に、岡山大学農学部において博士号を取得した。

博士号の主査をお願いした

小林昭雄教授(現:大阪大学名誉教授)に御礼をする際に

選んだ品がモンブラン製の万年筆。

その当時の僕にとっては高級な型番の万年筆だった。

 

同時に、僕自身への褒美として同じくモンブラン製の万年筆を購入した。

御礼の品の半値の品だったが僕にとっては高級な万年筆だった。

購入時の試し書きで、先生には極めてノーマルなペン先を、

そして僕用には一寸太めのペン先を選んだ。

 

以来、そのモンブラン製の万年筆で手紙を書いたり、サインをしたりしてきた。

ペン先と反対の先端にある箇所を回すことでインクを吸い上げる時、

なんとも言えぬ満足感とこれから書く緊張感に満たされたものだ。