現象の発見が研究の第一歩(1983年4月頃〜)

博士の研究史

I 博士の研究補佐をした1ヶ月の間で、

研究テーマを持つことになった。

バイオのバの字も知らなかった僕が

日本のバイオ研究の最高峰の一つである

東大応用微生物研究所に派遣されてから

1年で研究テーマを持って研究を開始出来るなんて

誰が考えただろう。

 

「現象を見出してその現象が起因する事を

解明することが研究なんだ。」

I 博士から教わった事である。

 

僕は真菌であるConidiobolus菌の植継ぎ作業中にコンタミさせてしまう失敗

をした際、そのコンタミ菌が真菌を溶かしてしまうという【現象】を見出した。

コンタミした菌がどうして真菌を溶かしてしまうのかを

解明するという事が【研究】なのだ。

まさしくI 博士から教わったそのもの。

 

僕の研究は、大石先生からのご指導の下で具体的に

進めていくことになった。

毎朝必ず教授室で先生にお目にかかれるので

日々の進捗の報告、その結果を見てのディスカッション

・・・が繰り返された。

 

先生がレポート用紙で具体的な試験内容、

具体的な結果のまとめ方などを書き示してくださった。

日々行われる直接のご指導によって

日々僕は研究者らしくなっていった。

この先生からの直接のご指導は、僕の人生を

確実に変えるものだったと確信している。

 

4月から1ヶ月半に渡る研究で、

僕の名前からSW菌と命名したコンタミ菌が

Conidiobolus菌を溶かしてしまう成分Xを

作りだしていること、

XがConidiobolus菌を溶かす能力、

Xの溶解力は熱やpHに左右されないこと、、、など

色々な知見を得るようになっていた。

 

そんな5月のある日に先生が朝のコーヒーを飲みながら

「7月に開催される日本農芸化学会関東支部で

発表しますか?」と僕に尋ねられた。

全く予期していなかった学会での発表・・・。

新たなる展開に胸が躍ったが、果たして発表が出来る段階なのだろうかという

不安も大きく僕の中に存在した。

だが降り注ぐチャンスは確実に掴む!という事で

「是非ともお願いします!」と直ぐに答えたのだった。

 

こうしてその年の7月、日本農芸化学会関東支部で

学会発表デビューを果たすことが出来た。

今から思えば発表のデーターは、内容的には

恥ずかしいものだったが、

発表することでデーターのまとめ方、

発表スライドの作成方法、

発表原稿作り、、、など多くの事を学ぶことが出来た。

またまた研究者としての歩みを一歩進めることになった。