矜持(Pride)

博士のひとり言

自宅の冷蔵庫の冷凍室が急に冷えなくなった。

徐々に中の冷凍品が溶けていく・・・。

冷気は来ているのだがとても冷凍が出来る冷気では無い。

 

急いでメーカーへ連絡したら、ラッキーなことに翌日の出張修理が決まった。

翌日、メーカーの修理担当者が来た。

冷蔵庫の設置してある部屋に案内して直ぐに修理が始まった・・・と思った直後、

「よろしいですか?」と声が掛かる。

行ってみると担当者が口を開いた。

「原因が分かりました。」

「えっ!?えらく早く分かるね。」

 

聞けば原因は冷媒ガスの漏れ・・・。

漏れの元が小さいので今はなんとか

冷やそうとしてはいるのだが冷凍出来る温度までは無理・・・。

修理するには溶接などが必要で直ぐに修理は出来ないこと、

修理代に一寸プラスすれば冷蔵庫を新しく購入するくらいの

修理代になってしまうこと、

これらの説明を聞いて修理は諦めて新規購入を決断するのには時間は要らなかった。

 

「折角来てもらったのに悪いけど修理はしないで新しい冷蔵庫を買うことにします。」

「分かりました。では今日の出張代だけ頂戴します。」

こんなやり取りで出張代の精算の書類を担当者が準備し始めた。

 

静まる空間の中で間が持てなかったので

「冷蔵庫なんてそんなに簡単に壊れるものでは無いと

思ってたけど・・・。購入から8年しか経っていないのに

壊れたというのは余程運が無いのかもね・・・。」

と話題を作る。

 

「こればかりは冷蔵庫毎の個体差としか言えないですねえ。」

担当者は精算処理するタブレットから目を離さずに答えた。

僕は更に話を続けた。

 

「寿命だからしょうがないよね。」

そうですね・・・なる答えを期待していたのだが、

担当者は精算用のタブレットへの入力の手を止め、

タブレットに落としていた視線を僕に向けてしっかりとした口調で言った。

「我々は修理可能な限り、寿命が来た・・・とは口が裂けても言いません。」

これぞプロの矜持なり!