松茸の人工栽培  〜2〜

博士の研究史

寺下隆夫先生による「松茸の人工栽培研究の現状」セミナー

を受講直後に名刺交換をしながら研究室に伺う事の許しを得た。

近畿大学の寺下研究室、正確には食品微生物学研究室を

訪ねたのはセミナー受講から1週間経った時だった。

 

松茸をはじめとするキノコに関する知識が皆無の

若造を先生は快く研究室に招き入れてくださった。

怖いもの知らずの僕は簡単な挨拶の後直ぐに切り出した。

「先生と共同研究を実施したいと考えているのですがどのようにすれば良いですか?」

何一つ根拠は無いのに、、、良く言うよ!って

感じの申し出は今から思えば、怖いもの知らずの

生意気な若者だからこその申し出だったかも知れない。

 

しかし先生は直ぐに共同研究を受け入れてくれた。

・・・が僕が松茸やキノコ類の研究をしていると思われたからなのだろう。

「どういうことをしたいのですか?」と僕は問いかけられた。

僕は正直に「すみません・・・松茸に関する知識は全くありません。

セミナーを受講して興味が沸いたので・・・。」と答えた。

 

先生は困惑の表情を浮かべながら、

「共同研究をするテーマ探しからしましょう。」と・・・仰ってくださった。

恐らく僕のような共同研究申し込みなんて

今までに経験なさった事は無かったのだろう。

 

その日から先ずは松茸の人工栽培に関する共同研究のテーマ探しが始まった。

先ずは松茸の人工栽培に関する今までの研究状況を

論文、書籍、特許情報などで把握する、、、

併行して実際の現場を見るという事で岩手県の松茸が採れる山を訪ねてみる、、、

そんな動きをしていて段々松茸の事が分かってきた。

 

松茸が実際に赤松の根に寄生して赤松から栄養を吸い取り育つこと、

赤松の細根に松茸菌糸が寄生し、細根を伝い次々と広がっていくこと、

松茸菌糸が赤松の細根に寄生してから数年掛けて菌糸が

広がっていき菌糸の層が数年かかって形成されること、

菌糸の層をシロと呼ぶこと、

そのシロはあの松茸の香りはほとんど発しないこと、

雷、大雨などの刺激によって香り豊かな子実体(松茸)が出現すること、

松茸が出現して初めて松茸の香りが発生すること、

シロの時には香りは発しないこと・・・。

 

松茸の出現=香りの発生・・・という事は

香りの発生メカニズムを知れば松茸発生のメカニズムが

わかり、それは松茸人工栽培の実現に近づくのでは無いか?

研究テーマ案が固まった・・・。

「松茸の香気成分発生メカニズムの解明」

研究室を訪ねて共同研究の申し込みをした日から

2週間後、このテーマ案を持って再び寺下研究室を訪ねたのだった。