松茸の人工栽培  〜4〜

博士の研究史

松茸菌の生育は非常に遅い。

だから三角フラスコを円状に回転させながら

松茸菌を培養する液体培養法では

松茸菌は小さな小さなツルッとしたボール状になっていく。

正しく松茸菌の菌糸の塊。

培養日数に応じて、仁丹状・ビー玉状・ピンポン球状・・・・と

綺麗なボールが出来上がっていく。

 

ピンポン球くらいになるのには新しい培地に植え替え、

植え替えしながら数ヶ月の期間が必要だ。

一度に数百本の三角フラスコ、つまり数百通りの培地が

入った三角フラスコが、ガッシャン・ガッシャンと

数台の回転振とう機が横浜工場内の敷地に建つ20坪の研究所で回り始めた。

 

先ずは松茸の香りが強く発生する松茸菌の培地条件を絞り込んでいく。

松茸菌が香りを強く発生させる培地組成の絞り込み、

つまりスクリーニング・・・。

これによって、基本とする培養条件を決定した。

 

次にすることは基本培地からそこに入る成分を一つ一つ

プラスしたりマイナスしたりして、また培養日数や培養温度などの変化をさせて、

突如として強い香りを発生させるような現象が起こるのをひたすら期待する

日々の繰り返し・・・。

 

培養液中のを高速液クロで松茸の香りの主たるモノである1-octen-3-olを測定していく。

スクリーニングで除かれたフラスコは用済みとなる。

用済みのフラスコの中には培養液と綺麗なボール状の松茸菌・・・、

これを処理して空いたフラスコを直ぐに

洗浄して新たな培地を作成して現象の発見に使用していく。

 

用済みのフラスコの中身である培養液と松茸菌を処理しているある時、

フト「松茸の形はしていないけどこのボール状のモノは

正真正銘の松茸だ。食べてみようかな?」と思いついた。

 

この思い付きが新たなる展開に繋がるなんてその時には全く思いもよらなかった。