ホルモン焼き

食・彩・記

ヒトによって食事の好みが違うのは当然だ。

素材、味付け、見た目・・・等、好き嫌いを

分ける要素は数多く存在する。

それらの要素の組み合わせは無限に近いだろうから

家庭で食事する時、友人知人と食事する時、

外食する時などは、妥協できる範囲での

互いの妥協の産物で食事をしているのかも知れない。

 

ホルモン・・・と聞いただけで、それこそ

テーブルをひっくり返したり(ちょっとオーバー・・)、

エーッ!と叫んだり、、

ホルモンは好き嫌いがハッキリ表れる料理素材の一つだろう。

何せ、見ただけでブヨブヨとした脂塊そのものと

判断される形と色。

 

ホルモンとは、牛・豚・鶏など食用動物の内臓のことだし、

嫌いな人から見ればどうしてそんなモノを食べるのか?

といったところだろう。

関西圏で「捨てるもの」を意味する「放るもん」を

語源とする説もあるようだし・・。

 

まあ、ヒトがどんなに嫌いだ!と叫ぼうとも、

僕はホルモン、特に牛のホルモンが好きだ。

ただいくら好きと言っても、絶対に嫌い!という

ヒト達と一緒の時は、例えお店の看板メニューで

あったとしても無理して頼む事はしない。

その位のマナーというか配慮はわきまえている。

最大級のストレスと共にグッと我慢する。

良い歳の紳士としてのたしなみだ。

 

会社の同僚やスタッフ達と時々行く韓国料理屋・・・。

真っ先に頼むのが、ホルモン焼きだ。

この時ばかりは、紳士としての振る舞いはどこかに置いておく。

下手すればパワハラで問題となるかも知れぬが、

僕が必ずホルモン焼きをオーダーする事を、

時間をかけて皆の潜在知識に擦り込んできた・・・つもりだ。

 

その店の主人もわきまえたモノで、

僕が「ホルモン焼き!」とオーダーすると

ニコッと微笑んで直ぐに調理を開始してくれる。

 

ジュージューと熱い鉄板皿に乗って

熱々のホルモン焼きが目の前に来る。

ご主人は、皿の一方にホルモンを寄せて

その下に台を噛ませてホルモンから出てくる大量の脂を

分けてくれる。

こんなご主人の気配りが好きだ。

 

プヨーンとした塊を箸でつまんで、

ご主人特製のタレに絡ませ口にする。

醤油ベースのタレの甘辛さをまず始めに

口一杯に感じ、噛めばプヨーンとした感触の後から

ジュワーッと脂が滲み出てタレ旨みと融合していく。

噛み進めばプヨーンとジュワーと旨みのオンパレード。

三位一体のオンパレードは、

もうここで呑み込もう!と決断するその一瞬まで続く。