そぼろ丼

食・彩・記

遙か昔、僕の中学・高校生の時は

学校に給食制度が無かったので昼食はお弁当か

校内の売店でサンドイッチや惣菜パンを買って済ませていた。

女手一つで僕ら兄妹を育ててくれた母の毎日は

超多忙だったに違いないがほとんど毎日お弁当を持たせてくれた。

お弁当の中身は前日の残り物のおかずと梅干し&沢庵・・・

というのがほとんどだったが、状況を知っていたから、

毎日のお弁当が有り難かった。

そんな中、お弁当の蓋を開けた時に

嬉しくなるメニューの一つが「そぼろ丼」だった。

 

母のお弁当の「そぼろ丼」・・・

先ずは弁当の蓋を開けた時の見た目が良い。

肉は肉、卵は卵でご飯と共に味わえる、

中心の部分は肉と卵の合体が味わえる、、、

というわけで

ガツンガツンと空の胃袋へ放り込んでいったものだ。

 

あれから半世紀以上が経過した現在でも

フト「そぼろ丼」が食べたくなる時がある。

何を作って食べようかな?・・・そうだ!「そぼろ丼」にしよう!

という感じである日のメニューが決まった。

 

卵は甘く、肉は甘辛く・・・が基本だ。

卵に出汁、砂糖、酒、そして塩・・・この塩が

甘味に深みを醸し出すポイント、、と僕は信じている。

良くかき混ぜてから弱火で箸でかき回しながら

じっくりと火を入れていく。

そぼろ状の卵が出来上がる。

 

肉は豚挽肉を使うのが好きだ。

生姜、醤油、味醂、砂糖・・・で煮ていく。

そぼろ状の肉が出来上がる。

 

温かいご飯を盛り付けて、

そぼろの卵と肉を乗せていく。

最後に海苔を振りかけて出来上がり。

 

先ずは卵の側をスプーンですくって口に入れる。

ふっくらと甘い卵とご飯が重なり合って

直ぐに胃袋へ吸い込まれていく。

次の一口は肉の側。

生姜が効いた甘塩っぱい肉とご飯が

これまた重なり合って

直ぐに胃袋へ吸い込まれていく。

3口目は卵と肉の境界線を跨いで卵と肉の共演だ。