「ミンククジラの燻製です。」
大将がニコッと微笑んで小皿をカウンターに置いてくれた。
薄切りにされた4片のミンククジラ燻製が小皿に横たわっている。
見た目、ボリュームが無いので対応に困る。
「燻製・・・ってお店で燻製するの?」
我ながらしょうもない質問だ・・・。
だが大将は、奥の調理場を指さしながらキチンと答えてくれた。
「ええ、しっかりとした味付けてこちらで燻製しています。」
1片を口に入れる。
口に入った瞬間に燻製のなんとも言えぬ風味が口に広がる。
脂部分も脂ぎっていない。
恐らく温燻によって脂分はしっかりと落とされているのだろう。
噛むとちょっとネットリした身から塩気が
出てきてその後から脂と身の旨味が追いかけてくる。
塩気、燻味がそこに混ざり合いながら口に広がっていく。