我が儘な生卵かけご飯

「食」のよもやま話

良く行く和食のお店で一通りの料理が出された後に

大将が「お腹の具合はいかがですか?」と問うてくる。

締めのご飯もの・・・僕がパスするハズが無いのは

分かっているのに、そう問うのが決まりのように大将が微笑んでくる。

 

イクラ、塩鮭、イクラとの2種、そして生卵。

それぞれを小さなお茶碗に盛った炊きたてのご飯の

上に乗せて供してくれる。

これらの4種から締めの食事をリクエスト出来る。

僕はいつも生卵をお願いする。

 

生卵かけご飯・・・死ぬ前に食べたいメニューの筆頭に

位置するほど大好きだ。

但し、条件がある。

生卵にかける醤油を自由に使えることが条件だ。

味音痴、味覚障害・・・なんていくら言われてもめげない。

僕好みの醤油量と卵の量の比率がピッタリした時は

生卵かけご飯を口にした瞬間から、至福の喜びに全身が包まれる。

 

この日も締めは何にしますか?と大将が客人と僕に尋ねた。

客人は一寸迷った末にイクラと鮭の2種丼を選択。

僕の基本データ?によれば、多くの人はこの2種丼を選択する。

生卵を選ぶ人は極めて少ない。

恐らく生卵かけご飯は自宅で簡単に食せるからではないかとにらんでいる・・・。

 

客人が選択した後、大将が僕に注文を即す。

この日は一寸冒険して、卵を2個でも良い?・・・と。

「もちろんです!」

このやり取りの瞬間、客人の顔に生卵も良いなあ・・・という

表情が浮かんだのは単なる思い過ごしだろうか・・・。

 

しばらく待っていると目の前に醤油差しと共に2個生卵かけご飯が出された。

炊きたてのご飯は一粒一粒が立っている。

そのご飯の上に卵が2つ。

ご飯も卵も互いにその存在を醸し出している。

卵の量とご飯の量を慎重に見極めて、醤油を掛け回していく。

ご飯と卵と醤油が箸の動きに伴って一体化していく。

2個の卵に対してご飯が少ないので、混ぜ合わせた後は

卵と醤油のプールにご飯が泳いでいる状態。

一口口にして理想の三位一体を確認する。

「うーん、、、旨い!」心の中で叫ぶ。

それから一気に口に放り込んでいく。

至福の喜びの時間は一瞬に過ぎてしまうが、

至福の喜びの記憶は長く残るのである。