この日の会食はいつもより少し遅めの時間からのスタートだった。
席について直ぐに出てきたのがウナギの押し寿司。
「先ずはお腹に入れて頂こうと思いまして・・。」
と大将が言う。
続けて「天然物の国産ウナギです。」との説明。
「これだけでお腹一杯になっちゃうね。」
と僕が軽口を叩くと
「シャリは小さくしてありますから・・・。」
遅い時間からの食事に配慮してくれたのだろう。
ここで大将には大変失礼だったのだが更なる軽口・・
「焼いた蒲焼きをお店で買ってきてシャリに乗せたの?」
大将は何時もの僕の軽口を心得ているから微動だしないで応えた。
「とんでもございません。生のウナギを捌いて蒸し上げて
焼いたモノです。タレも自家製です・・。」
客人がいるからいつもと違って一寸丁寧な口調・・・。
「さすがは大将だね!頂きます!」
一口すればパリッと焼かれた皮の先にフワーッとした
ウナギの身の淡泊さ、そして噛みしめれば
上品な酸味が効いた小さなシャリの存在を感じる。
更に噛み進めればシャリとウナギの混合物を
しっかり煮詰めた濃厚でありながら上品なタレが
まとめ上げてくれる。