天ぷら屋さんで程良く天ぷらを平らげている時、
「サツマイモです」と大将がカウンターに置いてくれた。
見るからにホクホクの状態に揚がっている。
早速、塩をパラパラと振りかけて口に運ぶ。
「熱いからお気を付け下さいね」
大将の言葉を受けてフーフーと冷ましながら一片の半分を嚙み切る。
パリッとした衣の存在と塩っ気が口に飛び込んでくる。
その先にホクッとしたサツマイモを感じると同時に
なんとも言えぬ甘味が口に広がっていく。
その甘味が塩気によって更に引き立てられていく。
噛みしめていけば、サツマイモの甘味が
ホクホク感と共に凝縮された旨みに変わっていく。
この凝縮された素材の旨みを創り出すのが
天ぷらの真骨頂と言えるだろう。
ホクッとした甘味の部分は焼き芋と同じだが
この凝縮された旨みは天ぷらでしか味わえない。
「旨いねえ。」
「ありがとうございます。」
大将との会話が始まった・・・。
「横目で次は何がくるのかがわかるもんだけど
これは大将が油へ投入するのを見逃しちゃった。」
「サツマイモを揚げ始めたのはお客様がお席に着いた時なんです。」
「えっ!だって1時間以上前じゃ無い?」
「じっくりと低温で揚げるんです。」
大将の手間と技の詰まったサツマイモの天ぷら・・・
残りの一片は、普段とは違ってじっくりと味わった。