水茄子

食・彩・記

大阪からのお客様に手土産で

水茄子ぬか漬けを頂いた。

 

水茄子の産地は大阪府にある泉州地域。

初夏から夏にかけての大阪出張の際、

食事に行く料理屋さんでは必ずと言って良いほど

水茄子が出されたものだ。

出される水茄子は浅漬けやぬか漬けが多い・・・。

 

「水茄子は手で裂くのが美味しく食べるコツ」

いつも料理屋さんで説明を受けていた。

裂いた大振りの水茄子にはオカカが乗せられ

そこに醤油が上品にかけられている。

手で裂くことによって、オカカや醤油が水茄子に

良く絡むことで美味しさが増すのだろう。

 

頂いた水茄子のぬか漬けは、ぬかにまみれた水茄子1本が

厚手の袋に詰められてきっちりと金具で封がされている。

開封にはハサミが必須。

開封すると僅かながらのぬか床の匂い・・・。

大量生産だからぬか床管理がしっかりなされているのだろう。

 

ぬか漬けといえば幼少の頃から馴染みが深い。

家の床下や物置にあるぬか床の壺や樽に

ズボッと手を入れてかき混ぜる役割を担っていた。

冬の寒い時期のぬか床混ぜは、その冷たさで手が悴んで

痺れるため辛い・・・。

それと共に全く食欲は沸かない強烈な匂い。

このぬかを洗い流して食す漬物の美味しさからは想像できない。

この美味しさが乳酸菌をはじめ酵母菌・酪酸菌そして

それこそ無数の細菌類から醸し出されていることを

知るのはかなり後のことになる。

 

さて頂いた水茄子を袋から取り出して付いているぬかを

洗い流す。

ヘタを切り落とし、その切り落とした断面に僅かな切り込みを

複数入れる。

この切り込みから縦に裂いていく。

直ぐに僕の口に収まるから・・という安易な気持ちがあるから

かなり適当。

 

ここに醤油だけをかけて頂く。

一口すれば、ほんのりとぬか漬けの香と塩気を感じる。

噛めばスポンジ状の身からジュワーッと上品なエキスが

染みだしてくる。

更に噛みしめていくと醤油の存在が絡んできて

旨みの多重連鎖が口一杯に広がっていく。

水茄子に含まれる無数の成分が

ぬかに存在する無数の微生物の働きと相まって

神秘とも思える味わいをもたらせてくれる。

 

究極の発酵食品であるぬか漬けの追求は

僕の数あるライフワークの一つになっている。