キンキの塩焼き

「食」のよもやま話

「お待たせしました。」

馴染みの割烹の大将が素敵なお皿を差し出した。

「ワーッ!僕、金目鯛、大好きなんだ。」

僕が言うとその瞬間に微笑んでいた大将の顔が曇る。

「これ・・・、金目鯛じゃ無いんです。」

「えっ!」

「良く似ているんですが、これはキンキなんです。」

 

こんな会話から大将の講義が始まった。

キンキの正式名は「キチジ(吉知次)」。
キチジはカサゴ科で金目鯛はキンメダイ科だから全く別の魚。

キンキの見た目は金目鯛と似ているが、

肌の色が金目鯛よりも少し淡い朱色で目も透明。

尾びれや背びれの形からも見分けがつく。

 

一通り講義を聞いてから、

「キンキの方が値が張るんじゃ無いの?馴染みがない分・・・。」と尋ねると

大将はよくぞ聞いてくれましたといった様子で即座に答えてくれた。

「キンキは高級魚の部類です。1匹当たり金目鯛の2-3倍はしますよ。」

 

塩が振られている皮と白身を箸で摘まんで口に入れる。

パリッとした塩気がある皮の存在を感じた

その直ぐ後にフワーッとした白身とその白身を

取り巻く脂の存在を感じる。

 

「脂が良く乗って美味しいね。」

と僕が言うと大将の講義が再開された・・・。

「金目鯛も脂は多いのですが、キンキは更に

脂が多いんです。脂の旨みを味わってください。」

 

高級魚キンキの塩焼きは、大将からの講義と共に

あっという間に僕の胃袋へと消えていった。