アワビの天ぷら Abalone tempura

食・彩・記

入荷が無ければその日のメニューには載らない、

載ったとしても予約した客のみが食べることが出来る

天ぷらがアワビの天ぷらだ。

このお店の隠れ看板メニューの一つだ。

 

カウンター越しから大将の所作を見るのは楽しい。

大将が頃合いを見計らって、鮮度の良さそうなアワビを

取り出してきて身を殻から外す。

外した身に打ち粉をして大きなボールに入れる。

ボールの中は天ぷら粉。

見ていると、粉の陸地とおそらく卵水であろう液体とを

天ぷら粉の濃度を見ながら合わせていく。

ある時には粉を足し、ある時は卵水を足している。

おそらく陸地の部分と液体の境目で天ぷら粉の濃度を

調整しているのだろう。

プロのなせる技だ。

 

ボールから出された身はちょうど良く濃度が調整された

天ぷら粉を纏っている。

そのまま大将は油の中へそっと泳がせていく。

油の中で泳いでいるアワビを引き揚げるタイミングを

計っているのだろう。

大将の目が真剣だ。

引き揚げられたアワビは直ぐにカットされて

僕の目の前へ・・・。

と同時に女将がキャビアの入った小皿をアワビの横へ

置いてくれる。

 

切り分けられたアワビの一片にキャビアを乗せて

口に運ぶ。

噛み進めば、キャビアの塩気が衣と混じり合っていく。

そしてその先にアワビのフワーッとしながらも

柔らかな噛み応えのある身の存在を感じ取ることが出来る。

キャビア添えのかなり贅沢なこのアワビの天ぷらは、

今までに海外からの客人も含めて

多くの方々に喜んでいただいている。