小鉢が目の前に現れた。
水タコの煮物か・・・と一口。
水タコの柔らかな身を噛みしめればジュワーッと旨味が浸み出してくる。
その旨味の中に味噌の風味を見出したので、
カウンター越しで次の料理を作っている大将に向かって口を開く。
「このタコの煮物は味噌が効いてるね」
大将は一寸困った顔を見せてから
「あの、、、皆さんタコと仰るんですがこれはホタテなんです。」
「えっ!?」僕の知ったか振りが脆くも崩れた瞬間だ。
大将が追い打ちをかける。
「ホタテを八丁味噌に漬けたんです。
食感がタコ、それも水タコの食感に近くなるんですよ。」
残りの一切れを口にしながら
食のマジックをしっかりと堪能することが出来た。