マスタード/からし

産地と属性

アブラナ科の一年草である「からし菜」もしくはその近縁種の種子から作られる香辛料。

大きく「洋からし(=マスタード)」と「和からし」に分けられるが、原料と製法は異なる。

洋からし(マスタード)は、からし菜の種子に酢や砂糖、ワインなどを加えて作られ、種子をすり潰して練ったものや、すり潰さずに粒を残して作られるものなど、様々な種類がある。ちなみに、種子を残して作られたものは通常「粒マスタード」と呼ばれる。マスタードの主原料は、「イエローマスタード,ホワイトマスタード」もしくは単に「マスタードシード」と呼ばれる種子だが、刺激的な辛みの強い「ブラウンマスタード,ブラックマスタード」もあり、こちらは主に粒マスタードを作る際に使用される。全体として酸味や甘味があり、辛さが抑えられているものが多い。

一方、和からしは「オリエンタルマスタード」と呼ばれることもある「西洋からし菜」の種子をすり潰し、粉状にしたものを水やぬるま湯で溶いて練ったもので、つんと鼻に抜ける強い辛みがあるのが特徴である。

からし菜の原産地は中央アジア付近といわれており、そこからヨーロッパやアジア全域に広まった。

ギリシャの数学者ピタゴラスは、「サソリによる刺傷の中和剤としてマスタードは有効」と述べたといわれる。ローマ時代初期のワイン造りには、ブドウ液(ムスト)に、マスタードの種子の粉末を混ぜてペースト状にしたものが加えられ醸造されていた。これをムスタムアーデンス(燃えるムスト)と呼んでいたことから、「マスタード」という名前が生まれ、のちに種子そのものの呼称となった。

中世のヨーロッパでは、庶民が使用できる唯一のスパイスとして、広く愛好されていた。

日本にはインドや中国を経由して伝わったとされているが、一般に使われるようになったのは室町時代以降で、からし酢やからしみそができたのも、その頃とされている。

種子から搾油(さくゆ)したマスタード油には消炎作用があり、ヨーロッパでは古くから塗り薬や湿布に利用されていた。日本でも、「加良之」「可良志」の名で、打ち身や神経痛、関節痛に使用されてきた。

栄養成分の働き

辛み成分であるアリルイソチオシアネートの抗菌作用によって、食中毒を予防する効果がある。また、がん予防や血栓の予防、唾液や消化液の分泌を促進して食欲を増進する効果もある。
β(ベータ)‐カロテンには、強い抗酸化作用があり、がん予防の効果が期待されている。

栄養成分

β‐カロテン、アリルイソチオシアネートなど

ポイント

時間がたつほど香りと辛みがなくなるので、粉末のものを使うたびに練り上げるとよい。ぬるま湯で錬ったあと、器を逆さにして5~10分おくとアクが抜ける。
ほんの少し白みそやしょうゆを加えるとまろやかになり、味に深みが出る。
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