産地と属性
セリ科イノンド属に属するハーブの一種。和名は「イノンド」だが、現在で英語名の「ディル(dill)」の方が一般的。地中海沿岸部などの南ヨーロッパからイラン、インドにかけての広い地域が原産地で、薬草として栽培されてきたが、現在では南北アメリカやアジア、北欧などでも栽培されている。日本には、江戸時代に伝わったとされている。
葉や茎だけでなく、花や実(種子)も利用できるため、収穫期は使用目的によって変わるが、夏から秋にかけて。
キャラウェイのような香りを持つ葉や茎は、香草としてドレッシングに加えたり、サラダやピクルスなどの材料にするほか、魚料理に添えられることが多いため「魚のハーブ」と呼ばれることもある。
葉よりも強い香りや辛味、苦みを持つ種子は、スパイスとして煮込み料理やソース、スープなどに利用されている。また種子を干して乾燥させたものは、漢方薬として食薬不振や胃もたれなどに効く生薬「蒔蘿子(じらし)」として用いられている。
栄養成分の働き
葉や茎に含まれる成分であるカルボンやリモネンは、食欲増進や消化促進に効果がある。また、種子に含まれる成分は、口腔内の粘膜を刺激して痰のキレをよくするほか、味覚神経を刺激して唾液や胃液の分泌を促すため、消化を助ける効果がある。
栄養成分
カルシウム、カリウム、βカロテン、ビタミンB1・C、食物繊維、鉄、マグネシウム、葉酸など
注意点
葉や茎は乾燥するとすぐに香りが失われてしまうため、新鮮なうちに使用すること。保存する際は、水に浸して軽く絞ったキッチンペーパーなどで包み、保存袋に入れて野菜室で。
ポイント
新鮮なディルを使いたい場合は、栽培キットなどを使って自宅で栽培する方法もある。
ディルがない場合は、同じセリ科のハーブである「フェンネル」で代用することが可能。香りは若干異なるが、ディルと同じように魚の臭みを消す効果を持つため。