産地と属性
ニシン目ニシン科に属する海水魚で、漢字では「鰶」「鮗」「子代」などと書く。
東北南部の太平洋以南から、日本海南部、黄海、東シナ海、南シナ海にかけての内湾や河口域に群れで生息する。
江戸前寿司のネタとして有名な「シンコ」(4~5㎝)や「コハダ」(7~10㎝)は幼魚の時の名前で、その後「ナカズミ」(13㎝程度)を経てコノシロ(15㎝以上、大きいものは25㎝程にも)と名前が変わる出世魚。しかし、初夏に獲れるシンコの初物はキロあたり数万円する高級魚であるのに対し、コノシロになると数十円という値段に下がるため、市場では「逆出世魚」などとも言われている。ちなみに成魚のコノシロは小骨が多く、痛みも早いため漁獲地周辺のみで消費され、その多くは飼料や肥料にされている。
シンコは6月下旬から8月頃まで、コハダは8月から9月が旬。コノシロは通年獲られているが、秋から冬に脂が乗るため旬とされている。
古くは「ツナシ」と呼ばれていたが、コノシロと呼ばれるようになったのには諸説ある。江戸時代には「この城」を食うという響きと、腹側から切り開いて調理するため「腹切魚」と呼ばれて武家には嫌われ、幕府も武士が食べることを禁止していた。
栄養成分の働き
小骨を気にせずに食せば、カルシウムとともにその吸収を助けるビタミンDが摂取できる。ビタミンB12は、全身へ酸素を運んでいる血液中の赤血球の合成を助ける役割がある。脂質の中にはDHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)などのオメガ3脂肪酸が含まれており、成人病予防にも効果が期待できる。
栄養成分
たんぱく質、脂質、カルシウム、鉄、ビタミンD、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、セレンなど
注意点
漁獲地以外でコノシロが市場に出回ることはほとんどないが、購入する際は銀色に光っているもの、触って硬いもの、目が赤くないものを選ぶこと。
ポイント
シンコやコハダは酢じめにして寿司ネタにされることが多いが、成魚のコノシロは小骨を気にしなければ濃厚な味わいが楽しめる。塩焼きや唐揚げ、煮つけなどで。卵巣・精巣も美味なため食した方が良い。