産地と属性
原料はカカオ豆(種子)。発酵・乾燥させたカカオ豆をローストし、砕きながらカカオニブと呼ばれる胚乳部と種皮に分けた後、カカオニブをすりつぶしてペースト状にしたものがチョコレートの元となる。カカオマスと呼ばれるこのペーストに、砂糖やココアバター、粉乳などを混ぜてよく練り、型に流し込んで固めることでチョコレートが完成する。
カカオ豆の主な産地は、コートジボアールやガーナなどのアフリカ諸国と、エクアドルやブラジルなどの中南米諸国などの他に、インドネシアでも栽培されている。
チョコレートの歴史は古く、ルーツは紀元前から古代メキシコで飲まれていたchocolatre(ショコラトル=「苦い水」の意味)という飲み物といわれている。カカオ豆をすり潰した液体に香辛料などを加えたもので、一種の薬であったと考えられている。その後、16世紀にスペイン人がカカオとショコラトルをヨーロッパに持ち帰ってから約300年後に、オランダのヴァン・ホーテンがカカオに含まれているココアバターからココアを発明。飲みやすくなったために、一般大衆に広まった。一方イギリスでは、19世紀の中頃にジョセフ・フライがカカオ豆をすりつぶしたものに砂糖とココアバターを加えて、現在のチョコレートの原型となるものを作る。但し、チョコレートが一般に広まったのは、それにミルクを加えたミルクチョコレートが作られるようになってから。
日本に伝わったのは18世紀末頃の江戸時代で、南蛮貿易を通じて長崎からもたらされた。国内で製造販売されるようになったのは明治10年のことで、当時は「猪口令糖」という漢字が当てられていた。
栄養成分の働き
糖質と脂質で8割近くを占める高カロリー食品だが、下記のような成分も含まれており、量を考えて摂れば健康効果が期待できる。
・カカオポリフェノール
ポリフェノールは、老化の原因となる活性酸素を除去する抗酸化作用があることで知られている。チョコレートの苦味や渋味はこのカカオポリフェノールによるもので、コレステロールの酸化を防いで動脈硬化などの生活習慣病の予防に効果的といわれている。
・テオプロミン
テオブロミンもチョコレートの苦味成分で、カカオはテオブロミンを含む数少ない食品。大脳を刺激して集中力や記憶力・思考力を高め気力をUPさせるなど、カフェインと同様の覚醒効果があるが、カフェインよりも緩やかに作用する。ただし、過剰摂取は利尿作用や興奮状態を高めてしまう可能性もあるため、適量を心掛けること。
・脂肪酸
カカオ豆の脂肪分に由来する脂肪酸は、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸という3種類の良質な資質を含んでいる。中でも多いのはステアリン酸で、体内に吸収されにくい性質を持っているため、体脂肪として蓄えられにくいという特徴がある。
栄養成分
糖質、脂質、たんぱく質、食物繊維、ビタミンE、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、リンなど
注意点
一般的に「ハイカカオチョコレート」と呼ばれているカカオ分70%以上のチョコレートは、カカオポリフェノールなどの特徴成分が多く含まれているため健康効果が期待できるが、その一方で通常のチョコレートより脂質が多くカロリーも高いため、食べすぎると肥満や体重増加につながる。
また、テオプロミンはカフェイン同様の作用があるため、妊娠中や授乳中の人は特に食べる量に気をつける必要がある。
ポイント
チョコレートをカレーのコク付けや隠し味として使うのは良く知られているが、メキシコにはチョコレートを使った料理がある。茹でたチキンなどに、溶かしたチョコレートにスパイスなどを加えた茶色いソースをかけた料理で、アメリカではこのソース自体を「モーレソース」と呼ぶが、メキシコで「モーレ」とはソース全般の意味がある。