産地と属性
クジラは大きく「ヒゲクジラ亜目」と「ハクジラ亜目」の2つに分類される。ヒゲクジラ類は歯を持たず、いわゆる「クジラヒゲ」と呼ばれる器官で、プランクトンや小魚・イカなどを大量に漉しとって食べている。シロナガスクジラに代表されるように大型のものが多いが、全体では14種程度しかいないとされている。
ハクジラ類はその名の通り歯があり魚類やイカなどを食すが、シャチのように自身より大型のクジラやイルカ、アザラシなどを捕食するものもいる。種類は60種以上。さまざまなイルカ類を含むため、小型のものも多い。
ちなみに「クジラ」と「イルカ」の間に明確な境界はなく、一般的にいう「イルカ」とはハクジラ類の小型の種の総称である。ただし、現代において「鯨肉」という場合、狭義にはイルカを含まない。
世界各地の沿岸部において太古から食されてきたが、日本でも古くからクジラを食する習慣があり、旧石器時代の貝塚からもクジラの骨が発見されている。ただ、昭和期以前は冷蔵冷凍技術が未発達だったこともあり、塩漬け肉や干し肉などの加工品以外は、沿岸部に限定されて食されてきた。全国に広まったのは戦後の食糧難時代であり、貴重なたんぱく源として学校給食などでも盛んに使われた。その後、1987年に商業捕鯨が禁止され、調査捕鯨によるもののみとなったため、流通量は激減した。
2019年から商業捕鯨が再開されるようになったが、捕獲種と数が限定されているため、市場に出回るものは大型のニタリクジラの肉が中心になるといわれている。(その他はイワシクジラとミンククジラの2種のみ)
様々な部位が食されるが、取れる量の最も多いのは「赤肉(アカニク)」と呼ばれる、背や腹などの脂肪の少ない部位。鯨カツや竜田揚げなどにして食することが多く、学校給食で出される場合、多くはこの部位となる。刺身にすることもある。その他、表皮とその下の脂肪層である「本皮(ホンガワ)」と呼ばれる部位も多く取れる。こちらは刺身のほか、乾燥させたり塩漬けにしたりして鍋や鯨汁の具にされる。鯨ベーコンの材料になることもある。
栄養成分とその働き
部位によって栄養成分が異なる。脂肪の多くが皮下脂肪に集中しているという鯨肉の特徴から、赤肉は低脂肪でたんぱく質が豊富。鉄分も多い。
また、脂肪にはドコサヘキサエン酸(DHA)やドコサペンタエン酸(DPA)などの人体に有益なオメガ3脂肪酸が他の獣肉やマグロなどにくらべて豊富に含まれている。
その他、特徴的な成分として「バレニン」と呼ばれるイミダゾールジペプチドの1種が含まれており、疲労を軽減させる効果がある。
注意点
冷凍肉の塊を解凍する際、ドリップと呼ばれる液体が大量に出ることがあるため、バットなどに入れて解凍し、食べる前にはキッチンペーパーなどでふき取ること。また解凍後はなるべく早く使い、再冷凍は風味が落ちるため避けること。
ポイント
冷凍の鯨肉を刺身にして食べる場合、半解凍の状態で好みの厚さに切り、ショウガ醤油やワサビ醤油につけて食す他、甘辛いタレをかけても良い。なお、脂身は溶けやすいため、解凍には注意が必要となる。