産地と属性
コショウ科コショウ属の植物で、その実を原料として作られる香辛料のこと。
原産地であるインドでは、2,500年前(紀元前500年頃)にはすでに胡椒の栽培が始まっていたといわれており、古代ギリシャでは医薬品として、ローマ帝国やその後のヨーロッパでは貨幣の代りとして使わることもあった。1453年に東ローマ帝国が滅びたことによってコショウの交易ルートが断たれたため、あらたなルートを探して「大航海時代」が始まったのは有名な話。日本には、中国の唐を経由して奈良時代に伝わった。抗菌・防腐作用、消化促進、血管拡張、血流促進、代謝促進作用などが知られていたため、当時は薬として使われていた。
コショウには以下の4種類があるが、収穫タイミングや製法などの違いによるもので、すべて元は同じ。
<黒コショウ>
「ブラックペッパー」とも呼ばれ、熟す前の緑色の実を長時間かけて乾燥させ、黒色に変色させたもの。黒くなった皮もそのまま使い、刺激的な辛さと強い風味があるのが特徴。
<白コショウ>
「ホワイトペッパー」とも呼ばれ、赤く完熟した実を水に浸し、皮を取り除くと表われる白い内核を乾燥させたもの。黒コショウほどの辛みはないが、黒とは異なる独特の風味がある。家庭でよく使われる粉状のコショウは、この白と黒をブレンドしたもの。
<青コショウ>
一般的には「グリーンペッパー」として知られており、緑色の未熟な実を茹でてから塩漬けにしたものと、フリーズドライにしたものの2種類がある。さわやかな香りが特徴。
<赤コショウ>
こちらも「ピンクペッパー」として知られている。製法はグリーンペッパーの塩漬けと同じだが、こちらは完熟した赤い実を用いる。青コショウよりもさらに軽めの風味が特徴。
栄養成分とその働き
辛味の成分としては、ピペリン、シャビシン、ピペリジンなど。辛み成分の大部分を占めるピペリンには、アドレナリンの放出を促し、体の中で熱やエネルギーを生み出す酵素の働きを促進するため、血流をスムーズにし、冷えを改善する効果が期待できる。同時に、栄養の吸収を促進し、食欲増進にもつながることが知られている。
香りの主成分はモノテルペンで、リモネンなどと同様にリラックス効果があるとされている。
注意点
コショウの消費期限は製造方法や保管状況にもよるが、おおよそ2〜3年。保存する場合は紫外線を避けること。挽いた後のものは、挽く前より香味が飛びやすくなり、味も落ちる。また、白コショウや黒コショウなど乾燥させたものの方が、塩漬けにした青コショウや赤コショウよりも長持ちする。
ピンクペッパーについては、ウルシ科の「ペッパーツリー(胡椒木)」の実や、「西洋ナナカマド」の実を原料としたものの方が多く流通されているため、注意が必要。
ポイント
コショウの持つ本来の風味を大事にしたい場合は、専用のミル(ペッパーミル)で使う度に挽いた方が良い。またはミル機能のついたボトル入りのものを使うこと。