ハム

産地と属性

本来は、豚の骨付きモモ肉を塩漬けや燻製にした加工肉のことだが、現在ではロース(背側の肉)などさまざまな部位が用いられるほか、加工方法の多様化のみならず、豚以外の肉を使用するものもあり、言葉の持つ意味は広がっている。

ハム(Ham)は英語であり、フランス語ではJambon(ジャンボン)、ドイツ語ではShinken(シンケン)、スペイン語ではJamón(ハモン)で、いずれも豚モモ肉に由来する名前。ただ、イタリア語のProsciutto(プロシュット,プロシュート)だけは、「乾燥させる」を意味するProsciugare(プロシュガーレ)から来ており、製法が名前の由来となっている。その一方、中国で塩漬けのことを「鹹(ハン)」、塩漬けにした肉を「鹹肉(ハンロウ)」と言うことから、この「ハン」が転じて「ハム」になったという説もある。

紀元前に狩猟で獲れた獣肉を塩漬けにして保存したのがその始まりとされているが、現代の製法としては、塩漬けにした後に、乾燥や煮沸をするのが一般的。豚モモ肉を骨付きのままで加工したものが「骨付きハム」で、骨をとり除いたものを「ボンレスハム」と呼ぶ。

また、塩漬けにした後、そのまま乾燥させただけのものを日本では「生ハム」または「ラックスハム」と呼び、スペインのJamón Serrano(ハモン・セラーノ)と前述のイタリア産Prosciuttoが有名。

家庭で良く食される「ロースハム」は日本発祥であり、第1次世界大戦の時に捕虜となったドイツ人が、豚のロース肉を使って日本人の好みに合ったハムを作ったことが始まりと言われている。また、豚や牛、羊、馬、ヤギなどの肉の小片につなぎを加えて固めた「プレスハム」も日本で独自に発展したハムである。

その他、広義のハムとして鶏肉や鴨肉を使ったものや、七面鳥を使った「ターキーハム」、魚肉ハムなどがある。

栄養成分とその働き

ロースハムなど豚肉のハムは、豚肉と同じようにたんぱく質が豊富であるほか、ビタミンB1、B2、ナイアシンなどを含んでいる。

たんぱく質は筋肉や内臓、骨、皮膚、髪の毛、血液などを作るもとになる。

ビタミンB1は糖質のエネルギー代謝にかかわっており、疲労回復を助ける効果がある。

ビタミンB2は脂質をエネルギーに変えるのに欠かせないビタミン。脂質が新しい細胞を作る手助けをすることで、皮膚や粘膜などを健康に保つことができる。

ナイアシンはビタミンの一種で、糖質、脂質、たんぱく質の代謝に関わり、エネルギーを作るのに欠かせない補酵素として働く。また、皮膚や粘膜の健康を保つ働きもある。

注意点

本来は保存食として開発されたハムだが、近年のものは塩分濃度を抑えていることもあり、比較的傷みやすい。通常は真空パックにされて売られているため、未開封の状態では日持ちするが、開封した後は2〜3日を目安に早めに食する方が良い。開封したものは乾燥しないようラップで包み、チャック付きの保存袋などに入れて冷蔵庫で保存すること。

ポイント

すぐに使い切れない場合は、風味は少し落ちるが冷凍保存することも可能。スライスハムは1枚ずつラップに包み、チャック付きの保存袋に入れ、袋の空気を抜いてから冷凍すること。

スライスハムは凍ったまま調理することもできるため、細切りにして冷凍しておくと炒め物やスープなどですぐに使える。厚切りのハムは冷蔵庫で解凍してから調理する。

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