フェンネル

産地と属性

セリ科ウイキョウ属の多年草。和名はウイキョウ(茴香)。原産地は、南ヨーロッパおよび地中海沿岸。
一般的には種子をスパイスとして使用するが、葉や茎、根も利用される。とくに葉は「魚のハーブ」と呼ばれるほど、魚の臭みと余分な油を取り除く働きがある。
種子はそのまま噛んで清涼剤にしたり、消化を促進する作用があるので古くから薬用として珍重されてきた。果実は、生薬「茴香」で芳香健胃作用がある。現在でも、漢方薬の安中散(あんちゅうさん)や、太田胃散、口中清涼剤の仁丹などにも使われている。
古代エジプトや古代ローマでも栽培されていたとの記録があり、歴史上もっとも古い作物の一つとされる。古代エジプトでは、『パピルス』に「フェンネルがあるのに摘まないのは愚か」と書かれているほど、多くの効能をもつことで知られている。古代ローマの戦士たちは、戦場に行くときに種子を携帯して胃腸を保護し、妻たちは減量のために使用していたといわれている。また、寝室の鍵穴に詰めて魔よけやお守りにした習慣もあった。清教徒時代のアメリカでは、空腹をまぎらわすために種子を食べて礼拝のときを過ごしたことから、「礼拝の種」とも呼ばれていた。
日本には平安時代に中国から伝わり、長野県、岩手県、富山県などで栽培された。
一般にハーブとして使用される「スィートフェンネル」、肥大化した根元を野菜として食べる「フローレンスフェンネル」、花材として用いる「ブロンズフェンネル」など、種類も多い。
旬は夏。素材の臭み取りや香りづけに適している。料理によって使用部位が異なり、ふつうの料理には葉を使い、菓子には種子をくだいて用いる。また、中国の「五香粉」や、「カレーパウダー」には欠かせない。

栄養成分の働き

アネトールは精油成分で、分子構造が女性ホルモンのエストロゲンと似ていることから、生理不順や更年期障害の改善、授乳期の女性では母乳の出をよくする効果がある。また、消化促進作用や去痰(たん)作用がある。
フェンコンも精油成分で、胆汁の分泌を促して消化をよくする働きや、鎮痛・鎮静作用などがある。
フラボノイドは植物に含まれる淡黄色から無色の成分で、ポリフェノールの一種。抗酸化作用があり、動脈硬化を予防したり、毛細血管を保護して血圧を適正にコントロールする働きがある。
オレイン酸やリノール酸は不飽和脂肪酸で、血液中のコレステロールや中性脂肪を減らす作用がある。体内では合成できない必須脂肪酸であり、細胞膜やホルモンの原料を供給するためにも必要となる。

栄養成分

アネトール、フェンコン、フラボノイド、脂肪酸(オレイン酸、リノール酸など)、有機酸など

注意点

ホルモンバランスがくずれるおそれがあるので、妊娠中の女性は多量の使用は避けたほうがよい。

ポイント

葉はジッパーなどに入れて冷凍、種子は乾燥させて保存すると長く使用できる。
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