産地と属性
アワビと同じくミミガイ科の巻貝の一種で、漢字では「床伏」「常節」「常伏」などと書く。名前の由来は、浅瀬の岩礁に生息しているため、浅い場所を示す「床」と小さいという意味の「ふし」から来たという説と、常に岩などの陰に伏している(隠れている)ことからつけられたという説などがある。
大きくなる前のアワビだと誤解されることもあるが、アワビが最大で25cm程度の大きさになるのに対し、トコブシは大きくても12cm程度にしかならず、また、殻に並ぶ「噴水口」の数もアワビの4~5個に対し、トコブシは6~8個であるという違いがある。
旬は、春から夏。かっては、北海道南部から九州の北部に至る広い地域の磯でよく見られたが、現在は激減してしまったため、流通しているものの多くは台湾などからの輸入冷凍品となっている。但し、水揚げ量が比較的多い徳島県や高知県では、生のものが入手できる。
栄養成分の働き
トコブシは栄養成分もアワビとよく似ているが、たんぱく質はトコブシのほうが多い。また、タウリンやベタインのほか、グリコーゲンも含まれているため、コレステロール値低下、肝機能強化、疲労回復が期待できる。
特に多く含まれるパントテン酸は、エネルギーの代謝を助け、免疫力アップや抗ストレス性などの効果が。ビタミンB12は、細胞の増殖を助け、神経を正常に機能させる効果が期待できる。
不飽和脂肪酸のひとつであるアラキドン酸は、免疫や生殖、神経の機能を整える効果があり、胃酸過多の予防や改善なども期待できる。
栄養成分
たんぱく質、ナトリウム、カリウム、リン、マグネシウム、銅、亜鉛、鉄、葉酸、パントテン酸、ビタミンB1・B2・B12など
注意点
生のものは、冷蔵保存しても翌日には食した方が良い。加熱後に冷凍されたものは、そのまま冷凍庫で数週間は保存できるが、賞味期限は守ること。
ポイント
生のアワビは固く歯ごたえがあるのに対し、トコブシは生でも柔らかい。また、熱を通したアワビが柔らかくなるのに対し、トコブシは熱を通し過ぎると固くなる。調理する際は、熱を加え過ぎないようにするとふっくらとした食感が楽しめる。