ゴマ

産地と属性

ゴマ科ゴマ属の一年草。漢字では「胡麻」と書く。原産地は、アフリカのサバンナ地帯といわれている。
高温で紫外線にさらされる過酷な環境でも育ち、強い生命力をもつことで世界中に広がり、食用として利用されるようになった最古の植物の一つといわれている。
古代アッシリア(紀元前3000年ごろ)の石盤に刻まれた聖書には、「地球を創造した神々が……セサミシード入りのワインを飲んだ」という記述が残っているという。古代エジプトでは医薬品や化粧品として使用され、クレオパトラも健康飲料としてゴマ油とハチミツを混ぜたものを愛飲していたという。古代から現代まで受け継がれているインドの伝承医学「アーユルヴェーダ」でもゴマ油が利用されるほか、中国では不老長寿の薬として最古の医薬書『神農本草経』に紹介されている。
日本には縄文時代後期、稲作と同時期に中国から伝わり、おもに焼き畑で作られていたとされる。その使用の痕跡は貝塚遺跡から発掘され、紀元前1200年ごろのものと推定されている。飛鳥時代に天武天皇が仏教の教えに従って「殺生肉食禁止令」を出したことで貴重なたんぱく源として普及し、寺などの精進料理に多く使われるようになった。当時は上層階級の食べ物で、庶民には高嶺の花だった。全国的で量産されるようになったのは、江戸時代に入ってから。大衆にも身近になり、本格的なゴマ食文化が確立された。
「ゴマかす」という言葉の語源は、「料理が下手な人でもゴマさえふりかければ、たちまちおいしい料理に変身させることができるから」とする説があるほど、万能調味料として、また健康食として貴重な食材だった。
種子の色によって黒ゴマ、白ゴマ、金ゴマの3種類に分けられる。
日本では関東以西の地域で栽培され、生産量がもっとも多いのは鹿児島県。旬は秋。 

栄養成分の働き

主成分の大半を占める脂肪酸は、リノール酸とオレイン酸。これらは不飽和脂肪酸と呼ばれ、血液中のコレステロールや中性脂肪を減らす働きがあり、動脈硬化や高血圧など、生活習慣病の予防に役立つ。
たんぱく質は、肝機能を高めるメチオニンや、肌や髪の毛を健康に保つトリプトファンなど、人体に必要な必須アミノ酸が豊富に含まれている。
ビタミンB群は、たんぱく質や脂質、糖質の代謝にかかわり、疲労回復に効果がある。ビタミンEは、抗酸化作用が強く、老化の予防に効果的。
ゴマリグナンは脂質に含まれる物質で、もっとも割合の高いセサミンには強い抗酸化作用がある。老化防止や肝機能の改善、LDL(悪玉)コレステロールを低下させ動脈硬化を防ぐ、血圧を下げるなどの効果が期待できる。
アントシアニンは黒ゴマに含まれる色素で、ポリフェノールの一種。抗酸化作用が強く、とくに眼精疲労の回復に効果がある。 

栄養成分

脂肪酸(リノール酸、オレイン酸)、たんぱく質、ビタミンB群、ビタミンE、ゴマリグナン、鉄、カルシウムなどのミネラル類、食物繊維、アントシアニンなど 

注意点

ゴマもゴマ油もカロリーが高いので、とりすぎに注意。
ゴマの脂肪分は、光や空気、熱によって酸化するため、直射日光や高温多湿を避け、密閉容器に入れて保存する。 

ポイント

色が濃く、つやがあって粒がそろっているものを選ぶ。
生では消化が悪いため、煎ったり、すったりして使うことで、高い栄養素を体内に吸収しやすくなる。
時間がたつとリノール酸が酸化するので、食べる直前に処理する。
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